糖尿病だと新型コロナウイルスの感染リスクは上がる?
糖尿病があると、細菌による感染症になりやすく、入院や死亡のリスクが上がることがわかっています。
では、細菌による感染症ではなく、ウイルスによる感染の場合はどうでしょうか?
過去の研究では、糖尿病があるとSARSコロナウイルス感染症による死亡率が高まること、新型インフルエンザウイルス(H1N1)感染症でも重症化のリスクが高まることがわかっています。
それでは新型コロナウイルスではどうでしょうか?
糖尿病があっても感染率は同等
「基礎疾患として糖尿病があるだけで、新型コロナウイルスに感染しやすくなるか」についてはとても気になりますね。
新型コロナウイルスに感染した方の中に、糖尿病の方がどれくらい含まれていたかを観察した研究結果は全世界で多数発表されました。
結果にはバラツキがあり、糖尿病があると新型コロナウイルスに感染しやすいという報告もあれば、そうでもないという報告もあります。
このように同一の研究テーマに対する複数の研究がある場合、これらの結果を集めて統合して解析するメタアナリシスという信頼度の高い方法があります。
メタアナリシスで解析してみると、コロナで入院中の糖尿病患者の比率と、もとの人口の糖尿病患者の比率には差がありませんでした(Diabetes & Mtabolic Syndrome:Clinical Resarc & reviews 14:535-545,2020)
この結果から、
「糖尿病であるからといって、必ずしも新型コロナウイルスに感染しやすくなるわけではない」
とわかります。
マスク、手洗いなどの感染対策は非常に重要ですが、感染を必要以上に恐れ、家に閉じこもって運動量が極端に落ちてしまうのは避けたいですね。
感染後の症状は重くなりやすい
先ほど紹介したメタアナリシスには続きがあります。
「糖尿病があると、新型コロナウイルス感染によって、重症化や死亡のリスクが上がるか」
ということについても、同様の解析が行われています。
その結果、糖尿病があると、重症化して人工呼吸器が必要となるリスクや、死亡してしまうリスクが高くなるということが分かりました。
ここで新型コロナウイルスに感染して入院した中国の18歳~75歳の方を対象に解析した多施設共同研究(Cell Metabolism 31:1068-1077, 2020)もご紹介します。
入院後の経過を観察すると、2型糖尿病患者さんの方が生存率が低いという結果でした。
リスクは血糖値と関係する
糖尿病だと必ず増悪しますか?
どうにかリスクを下げる方法は無いのですか?
血糖値が良いと重症化や死亡のリスクが下がります!
先ほど紹介した研究(Cell Metabolism 31:1068-1077, 2020)には続きがあります。
入院中に空腹時や食後2時間血糖値が1回でも180 mg/dLを超えた方を不良群とし、血糖値優良群と比較したところ、血糖値優良群は生存率が有意に高いという結果になりました。
参考までに、
血糖値良好群はHbA1c 7.3%で致死率は0.6%であったのに対し、
血糖値不良群はHbA1c 8.1%で致死率は6.0%でした。
血糖値以外の要素も重要です。
フランスの研究者(Diabetoligia 63(8):1500-1515,2020)が糖尿病患者さんのどような因子が重症度と関連するかを研究し、BMI(肥満度)と入院時の血糖値が関連すると報告しています。
以上より、感染時の血糖値が良好で、肥満度が低ければ、重症化し、死亡してしまうリスクを少しでも減らせるということが期待できます。
まとめ
・糖尿病であっても、新型コロナウイルスに対する感染率は上がるとは必ずしも言えない
・糖尿病だと、感染後に重症化しやすく死亡するリスクも上昇する
・入院時に血糖値が良いと重症化リスクが低い
適正体重と良い血糖コントロールを目指しましょう!