高血圧

  日本で最も多い生活習慣病、それが高血圧です。 患者数は4300万人と言われており、実に3人に1人という計算になります。血圧が高い状態を放置すると動脈硬化が進行し、脳、心臓、腎臓などの臓器にダメージを与え続けることで、脳卒中、心臓病、腎臓病を発症するリスクが高まります。

  ただし、よほど血圧が高くならない限り無症状のため、医療機関を受診し適切に血圧がコントロールされているのは、わずか1200万人程度と考えられております。ほとんどが遺伝と生活習慣によるものですが、血圧を上げてしまうホルモンの異常疑われた場合は精査が必要になります。

 

 

■目次
1.高血圧とは
2.高血圧になりやすい人は?
3.どのように診断するの?
4.血圧を下げるメリットは?
5.薬を飲まずに血圧を下げる方法は?
6.薬による治療は?
7.血圧の測り方は
8.高血圧症で受診される方へ

 

 

 

 

高血圧とは

  血圧は心臓から送り出された血液が血管の壁を押す圧力のことです。 上の血圧は心臓が収縮し血管にもっとも強い力がかかるときの圧力です。下の血圧はふくらんでいた大動脈が元にもどる間の圧力です。高齢になるなど動脈の壁が硬くなると、血管のふくらみが少なくなるため、上の血圧が上がりやすくなります。

 

 

 

 

高血圧になりやすい人は?

  約9割では遺伝的素因や食塩の過剰摂取、肥満などの要素が合わさって起こり、本態性高血圧と呼びます。これに対して二次性高血圧では血圧を上げるホルモンが増えている場合や、腎臓の働きが悪い場合、睡眠時無呼吸症候群がある場合などで起こります。本態性高血圧と比べて若い人で多くみられます。

 

 

 

 

どのように診断するの?

  高血圧を最も簡便かつ正確に診断するために有用なのは、家庭血圧です。 診察時に緊張して血圧が高くなる白衣高血圧のみでは降圧剤による治療は必要がないのですが、これを知るためには家庭血圧の測定が必要です。逆に診察室での血圧が低くても、家庭血圧が高い場合は仮面高血圧とよび、心血管イベントのリスクが高まるため治療が必要なのです。家庭血圧を測定し、高血圧状態となっていないか確認をすることはとても重要です。

二次性高血圧とは?

  高血圧の多くは体質・遺伝・環境・加齢により発症しますが、若年で発症したり薬物に対して難治性の場合などでは、その他の原因で高血圧となっている場合があります。この場合には、原因を明らかにして治療を行うことで、血圧が改善することがあります。

01腎実質性高血圧

  二次性高血圧の過半数を占め、その中でも慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症による場合が多い疾患です。腎臓の糸球体と呼ばれる部分が硬化し濾過率が低下するのて、これを保とうと糸球体の内圧が上がります。これがさらに糸球体を硬化させ、悪循環が生じてさらに腎機能が低下します。治療には塩分制限が重要で目標は1日6g未満です。日本人の平均摂取量は10g前後のため、味の濃いものがお好きな方には特に控えて頂きます。血糖値の是正も重要です。すでに腎機能が低下している場合には食事療法のみでの改善が難しく、降圧剤を併用しながら調整することが多い疾患です。

02腎血管性高血圧

  動脈硬化が進展し腎動脈が狭くなると血液が流れにくくなります。するとレニン・アンジオテンシン系のホルモンが分泌し血流が上がるのですが、血圧も上がってしまいます。診断は採血によるホルモン検査や画像検査で行います。若年でも線維筋性異形成や高安動脈炎ではありえる疾患です。治療としては薬物療法の他にカテーテル治療を行う場合もあります。

03原発性アルドステロン症

  腎臓の上には副腎とよばれる小さな臓器があります。この臓器は様々なホルモンを分泌します。このうち、アルドステロンを過剰に分泌することで血圧が上がってしまうのがこの疾患です。採血によるスクリーニング検査で陽性の場合、負荷試験や画像検査を行うことで診断します。手術療法を選択する場合には、カテーテル検査を行いホルモンが分泌される部位を確定することで、手術療法が可能か調べます。副腎の片側のみが問題であれば、摘出することで高血圧を根治できます。手術適応がない場合や、手術を希望されない場合には、薬物療法を行います。

04クッシング症候群

  副腎からコルチゾールという血圧を上げてしまうホルモンが過剰に分泌されることで発症します。コルチゾールはステロイドホルモンなので、過剰分泌による高血糖や皮下脂肪の増大など、高血圧以外の症状が出る場合があります。診断は採血によるホルモン検査や画像検査を行い、原因部位に対する手術や放射線治療などを行います。

05褐色細胞腫

  典型的には副腎からカテコールアミンという血圧を上げてしまうホルモンの分泌が過剰になってしまうことによる高血圧です。高血圧の他に頭痛、発汗過多、高血糖、代謝が亢進し体重が減少するなどの症状を伴うことがあります。診断は採血によるホルモン検査と、画像検査で確定し、治療は手術を行います。

06睡眠時無呼吸症候群

  呼吸状態が安定していると夜間は副交感神経が優位となっています。睡眠時無呼吸症候群では無呼吸や低呼吸状態が続くため、夜間でも交感神経が興奮した状態となります。さらに胸腔内圧が低下することで静脈の血流が多くなるため血圧が上昇してしまいます。

07薬剤性高血圧

  鎮痛薬の中でNSAIDsでは腎臓の血管を収縮させてしまうため血圧が高くなってしまいます。甘草を多く含む漢方薬などを服用した場合にも、偽アルドステロン症による高血圧が出現することがあります。

 

 

 

 

血圧を下げるメリットは?

  血圧を適正に保つことで、将来起こりうる脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管病や腎不全を予防できることが明らかになっています。

  近年最もインパクトのある研究結果であるSPRINT試験です。これは50歳以上の糖尿病合併者や脳卒中既往者を除いた大規模試験で、厳格に血圧を管理した群では心血管病イベントが25%、総死亡が27%低下していました。血圧が下がりすぎることで起こるめまいやふらつきなどのデメリットもあるため自覚症状の変化を観察し治療を行う必要があります。

 

 

 

 

薬を飲まずに血圧を下げる方法は?

  生活習慣の修正が必須になります。具体的には①減塩、②肥満の予防や改善、③節酒、④運動、⑤食事内容、⑥禁煙、⑦防寒、⑧情動のコントロールが有用です。

  日本人の塩分摂取平均は10g/日なので、高血圧では半分程度に塩分摂取量を控えることが望まれます。アルコール量は男性ではビールではロング缶、酎ハイでは7%まででは350mlまでは許容範囲ですが、9%以上のストロング系では350ml 1本でも飲みすぎになります。

  血圧を下げる食事は野菜・果物・魚が良いですが、腎不全の場合では生野菜と果物、糖尿病や肥満の場合は果物の過剰摂取がリスクになる場合があり注意が必要です。

 

 

 

 

薬はやめることができるの?

  降圧剤は生活習慣の是正に取り組んでも目標まで下がらない場合に行います。 血圧を下げる薬は、高血圧となった背景や基礎疾患・合併症などから選択します。降圧剤による治療中は効果の判定と、副作用の有無を観察しながら診療をしていきます。

  「血圧の薬は一度飲むとやめられない」と服薬をさける方も少なくないですが、生活習慣をしっかりと改善することで薬の減量や場合によっては中止が可能です。一般的にはⅠ度高血圧(140~159/90~99mmHg)で1剤低用量内服の場合には中止が可能となります。

 

 

 

 

血圧の測り方にもコツがあります

 血圧を正確に測定することは、高血圧治療のために非常に重要です。

用いる血圧計は、再現性が高いため、「上腕式」の血圧計がおすすめです。

家庭血圧の測り方

  • 起床時と就寝前に測定する
  • 2回測定して平均をとる
  • 起床後の測定はトイレの後で行う
  • 起床後1時間以内に測定する
  • 朝食や服用前に測定する
  • 測定の前には飲酒・喫煙・カフェインを摂らない
  • 測定中は話をしたり、手に力をいれない

血圧を測定するのによい姿勢は

  朝は寝たまま測定している方も少なくないのですが、これはNGです。姿勢はイスに脚を組まずに腰掛け、カフの高さを心臓に合わせて測定します。

購入すべき家庭血圧計のタイプは

  血圧計は薬局や家電量販店で購入できます。上腕式と手首式に分かれますが、正確さでは上腕式が上回ります。手首式は装着が簡便な一方、心臓の高さに合わせることが大事なのですが、このポジショニングが一定しないことが多いです。

 

 

 

 

高血圧症で受診される方へ

血圧は日中はストレスや運動などによって大きく変動しています。正確な血圧を把握するためには、家庭血圧の測定が非常に重要です。家庭で測定した血圧は、メモかスマホなどで記録して頂き、診察時に拝見いたします。診察時に測定する随時血圧以上に貴重な記録となり、治療にとても役立ちます。 日々の生活習慣や合併症の有無などにより最適な治療を提案しています。

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