関節リウマチ

  関節リウマチはとても有名な疾患で一度はこの病名を耳にしたことはあると思います。多くの方のイメージの通り、手や指などの関節が痛く腫れて、しだいに変形が進んでしまう病態です。近年では様々な治療法の開発がすすんだことで、疾患の活動性を抑え込んだ状態の「寛解」にまで到達することも多くなってきました。関節の破壊を防ぐためには、早期診断早期治療がとても大切です。

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最近指が痛くて、、、リウマチじゃないかしら?

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まずは診察してみましょう

■目次
1. 関節リウマチとは?
2. なぜ関節リウマチになるの?
3. 診断はどのようにするの?
4.どのような検査をするの?
5.どのような治療があるの?

 

 

 

 

関節リウマチとは

  関節リウマチは誰もが一度は名前は聞いたことがある有名な疾患だと思います。しかし有病率は高くなく、日本では0.6-1.0%、60~100万人ほどといわれています(Modern Rheumatol 24(1):33-40,2014)。

  関節が痛くなり変形する疾患は、関節リウマチの他に多数あります。最も罹患されている方が多いのは変形性関節症で有病率は高く3000千万人前後ともいわれます。 変形性関節症は軟骨がすり減ることによる加齢性変化の要素が強いですが、関節リウマチは異なります。関節リウマチは”自己免疫性疾患”なのです。

  自分の免疫が、関節の中の滑膜を攻撃し、炎症を起こす物質を過剰に放出してしまいます。このためリウマチのかかり始めではからだのだるさや熱っぽさがでたり、朝方にこわばるようになり、そのうち小さな関節が腫れて痛むようになり、それが全身の関節に広がっていくのが典型的です。

 

 

 

 

なぜリウマチになるの?

  患者さん免疫系の異常や微生物の感染などの様々原因が言われていますが、実は、関節リウマチを発症する真の原因については不明です。家系内に関節リウマチの方がいても、それほど強い遺伝性はない疾患です。

  歯周病と喫煙は関節リウマチとの密接な関係が指摘されています。すでに関節リウマチを発症した方でも、歯周病を治療し禁煙することで、関節リウマチの活動性も低下するため、生活習慣の是正がとても大切です。

 

 

 

 

関節リウマチの診断は?

  一般的には1987年のACR分類基準や2010年のACR/EULAR分類基準を用いて診断とします。

 

 

1987年ACR分類基準

 

 

  1987年ACR分類基準は古い基準ですが、特異度が高く(関節リウマチと確定する精度のこと)、シンプルでわかりやすく現在でも有用です。

  この分類基準の弱点はこの基準に合致しない関節リウマチもあり、診断の遅れにより早期からの治療時期を逃してしまうことがあります。その欠点を改善したのが、次の2010 ACR/EULAR分類基準です。

 

 

2010 ACR/EULAR分類基準

  この基準で6点以上であれば関節リウマチに分類されます。 ACR/EULAR分類基準の優れた点は関節リウマチを早期診断できることです。 早期診断することで、関節の破壊や変形が起きる前にしっかりと十分な治療を行えるようになりました。

  この分類基準の弱点としては、他の疾患もこの基準を満たしてしまうことがあるため、関節リウマチに似た関節症状が出る疾患を見極めることが大事です。関節リウマチに似た症状が出る疾患について、鑑別診断の難易度順に以下が知られています。

 

 

関節リウマチの鑑別疾患

 

 

  関節の痛みを主訴に来院される中で、リウマチの確定診断となる方より、上記疾患に分類される方のほうが多いのが実際です。まずは診断を確かめ最適な治療を行いましょう。

 

 

 

 

関節リウマチで行う検査は?

  診断で分類基準を用いるため、血液検査とレントゲン撮影を行います。初診時にはリウマトイド因子(RF) や抗CCP抗体を提出します。

  RFは関節リウマチ患者さんの多くで陽性になりますが、RFが陽性だからといって関節リウマチという訳ではありません。健康診断で関節症状がなくRF陽性の場合は多くは擬陽性であったり、シェーグレン症候群などの他の膠原病のことがあります。

  関節破壊の程度を知るためにはレントゲンを用いますが、初期の微細な変化はMRIや関節超音波(関節エコー)検査でないと分からないことがあります。関節エコーは簡便でありながらリウマチの活動性が手に取るように分かる優れた検査で、診断だけでなく治療の評価にも用います。

 

 

 

 

関節リウマチの治療方法は?

  関節リウマチの治療は大きく進歩しましたが、未だ根治療法は開発されていません。

  現時点でリウマチ治療の目標は、

  • 症状を緩和すること
  • 関節破壊や変形を予防すること
  • 身体機能を保持すること
  • 破壊された関節の働きを再建すること
  • 寛解に至ること

 になります。

薬物療法

01非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)

  炎症を起こす様々な物質の中で、プロスタグランジンを抑えることで効果を発揮する薬剤です。残念ながら関節リウマチによる骨破壊の進行はおさえないのですが、疼痛については即効性があるので、痛みのために生活に支障がある場合に用います。

  副作用として胃潰瘍と腎機能低下には注意が必要です。一般的に用いる胃薬には予防効果がなく、ミソプロストールやプロトンポンプ阻害薬あるいはボノプラザンでないと予防効果は十分ではありません。胃粘膜保護に悪影響を及ぼすCOX-1を阻害しない薬剤もあり、関節リウマチでもよく用います。

  腎血管の拡張が阻害されるため腎血流量が低下し、腎機能が低下することによって血圧の上昇をきたしますので、投与後に血圧が上昇したならば薬剤性の高血圧を考えます。

02副腎皮質ステロイド

  ステロイドの炎症抑制効果は強く、関節リウマチの治療初期には有用な薬剤です。 メトトレキサートなどの抗リウマチ薬は効果が出てくるまで遅く、初期にステロイドを併用することで早期に炎症を抑えることができます。リウマチの活動性によってはレスキューとして短期間内服したり、腫れている関節に注射を行う場合もあります。

  骨粗鬆症や易感染性、動脈硬化性疾患を合併することがあり、できる限りステロイドからは離脱すべきですが、治療のために少量のステロイドの継続が必要な場合もあります。副腎という臓器からは1日あたり3mgほどのステロイドホルモンが分泌されているのですが、ステロイドの内服を続けた状態では、副腎がお休みをして自前のステロイドを分泌しなくなってしまいます。この状態で急にステロイドをやめてしまうと、ステロイドが足らないことによる発熱や倦怠感、低血圧によるショック状態となる場合がありますので、自己判断で内服をやめたり減らさないことがとても大事です。

03抗リウマチ薬(csDMARDs)

  抗リウマチ薬とは関節リウマチによる免疫異常を改善し炎症を抑える薬剤の総称です。現在では発症早期から抗リウマチ薬で治療を開始することが標準です。なかでもメトトレキサートは効果も強く、導入できるか先ず検討します。

  リウマチ治療の基本となる薬剤ですが、効果が出てくるまでに数ヶ月を要します。 有効であれば効果は持続します。じわじわしっかり効くイメージです。

04生物学的製剤

  関節リウマチではTNF-αやIL-6などの様々なサイトカインという物質が活性化して炎症を引き起こします。このサイトカインの流れを止める役割をするのが生物学的製剤です。関節リウマチに対する治療効果は非常に高く、効果の発現も早く時には数日で著効します。強い炎症があるものの関節変形が少ない早期に投与することが望ましい薬剤です。

  デメリットとしてはB型肝炎や結核が潜伏している場合に再活性しやすくなり、通常であればかかりにくいタイプのニューモシスチス肺炎にかかりやすくなります。非常に高価な薬剤である(3割負担で月1-3万円)こともデメリットですが、最近ではバイオシミラー(後続品)も出ており、以前より必要なコストが下がっています。全ての薬剤はインスリン製剤のように自己注射が可能です。

05JAK阻害薬

  関節リウマチではサイトカインという物質が活性化して炎症を引き起こします。生物学的製剤と異なる点は、JAK阻害薬では「内服製剤」により「複数」のサイトカインからの刺激を遮断することで炎症を抑えることが特徴です。生物学的製剤と同様、感染症の有無や肝・腎・肺の機能が悪くないことが必要で、加えて白血球や赤血球が少なくないことが使用の条件です。効果は生物学的製剤と同等で、一部の生物学的製剤を上回る効果のものもあります。ただし帯状疱疹を発症するリスクは高くなるため、皮膚症状やビリビリとした痛みが出た場合には診察が必要となります。

06抗RANKL 抗体製剤

  関節リウマチやステロイドの使用は骨粗鬆症を発症する大きなリスク因子となります。 一般的な骨粗鬆症の診断には%YAM値やFRAXツールを用いますが、ステロイドを使用している場合は診断基準が異なります。

  抗RANKL抗体製剤であるデノスマブは骨密度の改善だけでなく、「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」としても使用できる特徴があります。

手術療法

  薬物療法が進歩したとはいえ、関節障害が進行し手術療法が必要になることもあります。 手術療法は人工関節置換術・関節固定術・滑膜切除術・関節形成術などがありますが、手術を行う時期が遅いほど選択肢は少なくなりますので、外科療法を検討する場合は早めに主治医に相談しましょう

関節リウマチで受診される方へ

関節リウマチの診断や治療について、簡単に解説しました。

このごろ指がこわばる、違和感がある、腫れる、痛みがあるなどの症状があれば初期のリウマチの可能性があります。リウマチは頻度の低い疾患ですが、初期のリウマチであれば早期治療により関節破壊を防ぐことができます。

少しでも気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。

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